中国酒(紹興酒)製造法

黄酒(紹興酒)は醸造酒です。醸造酒は原料を発酵させてアルコールを作るお酒です。原料を発酵させるという事は、酵母という微生物に原料の糖分を食べさせてアルコールと炭酸ガスを発生させます。そして原料によって以下の様な発酵方法に分けられます。



 


ワイン
 糖分となる原料のブドウが豊富に糖分を含んでいるので、ブドウを糖分に分解する必要がなく直接発酵させる事ができる。

ビール 原料の麦の糖分が不充分なためまず先に麦を麦芽に変える事によって糖分に分解し発酵させる。

日本酒・黄酒 原料の米やもち米の糖分が不充分なため麹を使って糖分に分解し発酵させる。その時、ひとつの槽で同時に糖化分解と発酵を行う。


■日本酒との違い
日本酒の起源は中国の黄酒から麹酒文化の技術が伝来してきたものと言われます。製造工程については同じ並行複式発酵によるもので、大変似てます。大きな違いは日本酒の原料は米であるのに対し黄酒はもち米(一部地域はその他の穀物)、麹は米に対して麦、そして一番特徴的な違いは、黄酒は醸造完了後、原酒を熟成させた後、数種類をブレンドして完成品になるところです。

 





■具体的な製造方法

並行複発酵は古来中国で麹の発見により可能になった世界でも稀に見る、とっても高技術な醸造法です。国土の広大な中国では、地方によって原料や製造法が違ってくる部分がありますが基本的には以下の作業工程がベースになってます。

淋飯酒と攤飯酒と言う2種類のお酒を造ります。淋飯酒の”淋”は水をかけるという意味で、攤飯酒の”攤”はひろげて置くという意味、両者は原料を蒸煮した後の放冷のやり方の違いから名ずけられました。攤飯酒は別名、元紅酒とも呼ばれ黄酒のもっともオーソドックスなタイプの完成品です。一方淋飯酒は攤飯酒の酒母(酵母)として使われる原料の一部と言ったらよいでしょう。先ず攤飯酒を造るにあたり酒母となる淋飯酒を造らなければなりません。両者の製法は大部分同じなので一緒の流れで説明します。





精米 精米歩合は大体90%。

浸米 蒸煮するために事前に水分を吸収させる。淋飯酒約一日、攤飯酒は約1週間(この時、浸米に用いた水を?水と呼ぶ)。

蒸煮・冷却 蒸し終えた後、淋飯酒は水をかけて冷却。攤飯酒は竹敷にひろげて自然冷却。

仕込み 淋飯酒は500Lの大甕に淋飯と酒薬(酵母)を入れて酒母を造り、その後に水と麦麹を入れる。攤飯酒は攤飯に?水、水、麦麹、淋飯酒(酵母)を入れる。

発酵 淋飯酒は1次発酵3日間、2次発酵約2週間。攤飯酒は1次発酵5日間(30度)、2次発酵80日間(常温)。両者共、途中数度に分けて開?(専用の長い棒)で混ぜる。

圧濾・殺菌 圧搾して濾過を終え新酒となる。80度〜90度で加熱殺菌。

貯蔵・ブレンド 23Lの甕に入れて貯蔵(1年〜50年)。原酒をブレンドして完成品。



もち米

酒薬




原料・水
芳醇な香りとふくよかな味を造るには原料の適否や仕入水質が重要であることは、他のお酒とかわりません。仕込水に関しては各地方の良水は供給に足りていますが、原料となる穀物は近代化の流れによって農地が減り、地元原産のものが足りず近隣の省から補充しているのが現状です。また、日本酒やワインの様に原料の産地や品種などに、こだわりがありません。

浆水
攤飯酒の原料もち米を浸水した時に使用した水で、1週間と長時間置いているため、乳酸発酵を起こします。乳酸は醪(酒母)の腐敗を防いで酵母の増殖を促進し酒の味を整えます。?水を仕込水に用いる製法は黄酒だけのものでなく以前は日本酒にもあったようで、それが現在の山廃・生酛仕込みの基になったと言われています。


酒薬
別名白薬、小曲、酒餅、とも言われています。中国独特の重要な原料で、淋飯酒の1次発酵に用います。酵母の種を兼ねた一種の麹で、淋飯酒の酒母を造ります。昔は白・黒の2種類が存在しましたが、今は白薬だけ利用されてます。酒薬は粳米とヤナギ蓼の粉末を混ぜ、水で練り合わせて扁平状の餅を作る、それに古い酒薬の粉をまぶし麹室に入れ4週間寝かせてクモノスカビ、毛カビ、酵母菌等を培養します。酒薬の製造技術は黄酒の中でも最も重要な部分と言われ、国家秘密とまで言ってもいいくらいだそうです。熟練の技術工による厳密な製造配方によって造り出されなければなりません。


麦麹
中国では麹の事を曲と呼び、地方により使う曲は数種類あり、その地方独特の曲や使い方により地方独自の黄酒の味わいが生まれます。一般的なものは麦麹で、その製法は砕いた小麦を水に加えてかき混ぜ、長方形の木枠に入れ、稲わらで包んで、麹室で約1カ月かけて製麹します。

ブレンド
黄酒は日本酒やビールに比べエキス分になるアミノ酸、糖分、有機酸が多いため、味が粗くなります。そのため味を丸くするために熟成させなければなりません。熟成は甕に入れて貯蔵し、甕には微細な孔があるため外気との呼吸が行われ熟成がよりいっそう促進します。しかし最近では大量生産向けに大型のタンクを利用して貯蔵されるものもあります。このように熟成されたお酒は直接熟成期間を経て完成品となるわけでなく、そこから幾種かの年代物のお酒をブレンドする事によって味を調整して完成させます。
例えば10年熟成の黄酒をブレンドする時、3年熟成3分:8年熟成3分:12年熟成4分などと各年代ごとの割合を合わせた平均を10年熟成とみなします。ブレンドの割合の出し方は国家規定に基づいた算出法があり、各酒蔵は基準に基づきメーカー独自のブレンド調合法をいくつも持っています。この作業が最後に黄酒の味の善し悪しを決める重要作業工程です。



■黄酒(紹興酒)の色はなぜ、琥珀色なのか?

日本の清酒と共通した技術や原料でつくられる黄酒は、なぜ琥珀の色になるのでしょうか?黄酒はアミノ酸の量が特に多く、このアミノ酸と糖が貯蔵中に化学反応を起こしメラノイジンという褐色物質を生成することによります。また、熟成時、甕から溶出した鉄分によって色は更に濃くなっていきます。


■攤飯酒と加飯酒の違い

北方・南方黄酒には多くの酒蔵が攤飯酒に近い製造法で製造していますが、紹興の黄酒は加飯酒と言う種類の黄酒がほとんどです。製造方法は攤飯酒とほぼ一緒で原料のもち米を更に多く加える事(この事が名前の加飯の由来です。)により手間と原材料を多くかけたワンランク上の黄酒と言ってもいいでしょう。またもうひとつの大きな違いは加飯酒は醸造後、残った酒粕を蒸留して白酒を作り、それを酒度調整に使います。そのため酒度数が攤飯酒よりやや高くなります。

  もち米 麦麹 浸米後水 酒母 米酒
攤飯酒 100kg 128kg 20kg 75kg 9g 0kg
加飯酒 100kg 200kg 35kg 72kg 12kg 7kg



■糖分含有量で区分される黄酒

黄酒(紹興酒)は国家の規定により糖分含有量によって4種類のタイプに分類されます。黄酒を飲む前に、おおよその味を分類するためには生産地、銘柄そしてこの糖分含有量を理解していれば、味のタイプが解ります。


干型 糖分 15g以下/升
半干型 糖分 15g〜40g/升
半甜型 糖分 40g〜100g/升
甜型 糖分 100g以上/升