中国酒の歴史は非常に古く、現在の中国ではさまざまな地域で多種多様な酒が造られています。
中国酒の代表的なものとして知られるのが、米などの穀物を原料として造る黄酒と、蒸留によって造られる白酒です。そして、日本でもよく知られている紹興酒は、黄酒の一つです。
中国で酒造りが始まった時期と、現在の紹興酒や白酒が成立した時期は同じではありません。この記事では、考古学的に確認されている古代の発酵酒から、黄酒・紹興酒・白酒の発展までを整理し、中国酒の歴史をわかりやすく紹介します。
この記事のポイント
中国酒の歴史は、古代の穀物などを利用した発酵飲料から始まり、長い年月をかけて黄酒などの醸造酒や、白酒に代表される蒸留酒へと発展してきた歴史です。
現在の中国酒を大きく理解するなら、まず「醸造酒」と「蒸留酒」に分けると分かりやすくなります。
| 種類 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|
| 黄酒 | 穀物を麹などで糖化・発酵させる醸造酒 | 紹興酒、女児紅など |
| 白酒 | 発酵させたもろみを蒸留して造る蒸留酒 | 茅台酒、五粮液など |
この二つは同じ「中国酒」ですが、製造方法も味わいも大きく異なります。
中国の酒の歴史を考えるうえで重要なのが、河南省の賈湖(かこ)遺跡です。
2004年に発表された研究では、賈湖遺跡から出土した土器に残された有機物を化学分析した結果、米・蜂蜜・果実などを利用した発酵飲料が約9,000年前に造られていたことを示す証拠が報告されました。
これは現在確認されている中国の非常に古い発酵飲料の証拠の一つです。
ただし、この古代の飲料を現在の紹興酒や黄酒と同一視することはできません。古代の発酵飲料と、後世に発展した黄酒・紹興酒は、時代や製法を分けて考える必要があります。
中国では農耕文化の発展とともに、米や雑穀などの穀物を利用した発酵飲料が発展していきました。
商(殷)代から西周にかけての遺跡からは、酒を入れていたと考えられる青銅器なども出土しており、酒が祭祀や社会生活の中で重要な役割を持っていたことがうかがえます。
さらに古代の酒造りでは、穀物をそのまま発酵させるだけでなく、麹などを利用して穀物のデンプンを発酵可能な糖へ変える技術が発達していきました。
この「糖化」と「アルコール発酵」を微生物の働きによって進める技術は、後の中国の醸造酒文化を理解するうえで重要なポイントです。
黄酒(ホアンチュウ)とは、中国で伝統的に造られてきた醸造酒の一種です。
米や麦などの穀物を原料とし、酒曲などを利用して糖化と発酵を行います。
黄酒には地域によってさまざまな種類があり、浙江省の紹興黄酒、山東省の即墨老酒など、それぞれの地域で異なる原料・麹・製法・味わいが発展してきました。
つまり、「黄酒」という大きなカテゴリーの中に、さまざまな地域の黄酒が存在すると考えると分かりやすいでしょう。
黄酒と紹興酒は同じものではありません。
黄酒は中国の伝統的な醸造酒を指す大きなカテゴリーで、紹興酒はその中でも浙江省紹興市を中心とする地域で発展した黄酒です。
たとえるなら、
中国酒
↓
黄酒
↓
紹興酒
という関係です。
なお、現在の紹興黄酒については、紹興市の条例において、紹興で伝承・発展してきた伝統的な製法や、地理的表示に関する要件などが定められています。
紹興は中国を代表する黄酒の産地の一つです。
浙江省などの公的資料では、紹興黄酒には約2,500年の発展の歴史があるとされています。
春秋戦国時代には、現在の紹興周辺にあたる越の地域で酒造りが行われていたことを示す文献や故事が残されています。
有名なのが、越王勾践(こうせん)にまつわる「投醪」の故事です。
これは、越王勾践が呉との戦いに向かう際、民から贈られた酒を兵士たちと分かち合ったという故事で、紹興の酒文化を象徴する話として現在まで伝えられています。
ただし、この故事をもって「現在の紹興酒がその時代に現在と同じ製法で造られていた」と断定することはできません。古代の酒造りの記録と、現在の紹興酒の製法は区別して考える必要があります。
紹興の酒文化には、単に酒を飲むだけではなく、人生の節目と酒を結びつける文化もあります。
代表的なのが女児紅(ニューアルホン)です。
紹興周辺では、女児が生まれた際に酒を仕込み、成長して嫁ぐ際にその酒を取り出して祝いの席で飲むという故事が伝えられてきました。
また、長期間貯蔵した酒を装飾した甕などに入れて保存する文化もあり、紹興酒は食文化だけでなく、婚礼や祝い事、文学などとも深く結びついて発展しました。
こうした酒文化の積み重ねも、紹興酒が単なるアルコール飲料ではなく、紹興の歴史や文化を象徴する存在となった理由の一つです。
紹興で黄酒文化が発展した理由には、米を生産できる豊かな水田、酒造りに適した水、気候、そして長い年月をかけて培われた醸造技術など、複数の要素があります。
特に紹興黄酒では、鑒湖(かんこ)の水が酒造りと深く結びついてきました。
現在の地理的表示製品「紹興酒(紹興黄酒)」についても、国家標準では原料や産地などに関する基準が定められており、紹興の地域性が重要視されています。
現在のGB/T 17946-2008「地理標志産品 紹興酒(紹興黄酒)」は2025年の再審査でも継続有効とされています。
白酒(バイジュウ)は、中国を代表する蒸留酒です。
黄酒が穀物を発酵させて造る醸造酒であるのに対し、白酒は発酵させたもろみを蒸留することで、アルコールを濃縮して造ります。
現在の白酒には、茅台酒、五粮液、汾酒など、さまざまな地域・香型の酒があります。
白酒の起源については、現在も一つの年代に断定することはできません。
宋代以前から蒸留技術が存在した可能性を指摘する研究がある一方、元代には蒸留による酒造りを示す文献資料が確認されるという研究もあります。
そのため、「白酒は○○年に誕生した」と単純に説明するよりも、中国における蒸留技術が長い時間をかけて発展し、現在の白酒文化につながったと考えるほうが適切です。
| 黄酒 | 白酒 | |
|---|---|---|
| 酒の種類 | 醸造酒 | 蒸留酒 |
| 主な原料 | 米・麦など | 高粱などの穀物 |
| 製造方法 | 糖化・発酵・圧搾など | 発酵後に蒸留 |
| 代表例 | 紹興酒など | 茅台酒・五粮液など |
| 時代・年代 | 中国酒の歴史 |
|---|---|
| 約9,000年前 | 河南省・賈湖遺跡で、米・蜂蜜・果実などを利用した発酵飲料の痕跡が確認される。 |
| 紀元前2千年紀以前 | 穀物を利用した発酵飲料の技術が発展していく。 |
| 春秋・戦国時代 | 現在の紹興周辺を含む越の地域で酒造りが行われていたことを示す文献や故事が残る。 |
| 漢代以降 | 麹を利用した穀物酒の醸造技術が発展する。 |
| 唐・宋時代 | 酒造技術や酒文化がさらに発展。文人文化とも酒が深く結びつく。 |
| 元〜明・清時代 | 蒸留技術による酒造りが発展し、後の白酒文化につながっていく。 |
| 現代 | 黄酒、白酒などが中国各地の代表的な酒文化として発展している。 |
中国では、河南省の賈湖遺跡から約9,000年前の発酵飲料の痕跡が確認されています。ただし、これは現在の紹興酒や白酒そのものではなく、古代の発酵飲料です。
「現在の中国酒の中で最も古い銘柄」を特定することはできません。考古学的には、賈湖遺跡から約9,000年前の発酵飲料の証拠が確認されており、中国に非常に古い発酵酒文化が存在したことが分かっています。
同じではありません。黄酒は中国の伝統的な醸造酒のカテゴリーで、紹興酒はその中でも浙江省紹興市を中心に発展した黄酒です。
紹興周辺の酒造りは春秋戦国時代まで遡る文献や故事があり、浙江省の公的資料では紹興黄酒には約2,500年の発展の歴史があるとされています。ただし、古代の酒と現在の紹興酒がまったく同じ製法だったと断定することはできません。
紹興酒は黄酒に分類される醸造酒で、白酒は蒸留酒です。製造方法、アルコール度数、香り、味わいなどに大きな違いがあります。
中国には黄酒、白酒をはじめ、果実酒などさまざまな酒があります。黄酒だけを見ても、紹興黄酒、即墨老酒など、地域によって原料や麹、製法、味わいが異なります。
紹興は米作に適した地域で、酒造りに関係する水資源にも恵まれていました。さらに長い年月をかけて独自の醸造技術が発展し、紹興黄酒の産地として知られるようになりました。
中国酒の歴史は、単純に「何千年前から酒があった」というだけではありません。
古代の発酵飲料から始まり、穀物を糖化・発酵させる技術が発展し、地域ごとに異なる酒文化が生まれました。
その中で、紹興では黄酒の醸造文化が長い年月をかけて受け継がれ、現在の紹興酒へとつながっています。
一方、蒸留技術の発展は中国独自の白酒文化を生み出しました。
黄酒と白酒は、同じ中国酒でありながら、まったく異なる製法と歴史を持っています。
中国酒を飲むとき、その背景にある地域・原料・麹・製法・歴史を知っていると、同じ一杯でもまた違った味わい方ができます。
酒中旨仙では、紹興酒をはじめとする中国酒を、商品の紹介だけでなく歴史・文化・製造方法・産地などの視点から紹介しています。
中国酒には、日本ではまだ知られていないさまざまな酒があります。
「紹興酒は知っているけれど、黄酒はよく分からない」
「紹興酒と白酒は何が違うの?」
「中国にはどんな酒があるの?」
そんな疑問をきっかけに、中国酒の奥深い世界を楽しんでいただければ幸いです。
本ページでは、中国の酒文化に関する公的資料、国家標準、歴史資料および研究論文などを参考に、現在確認できる情報を整理しています。
中国酒の歴史には、文献による記録、伝承、考古学的な証拠、研究者による学説などが含まれます。そのため、起源や年代について見解が分かれる場合には、特定の説を断定せず、「〜とされる」「〜という説がある」などの表現を用いています。
特に古代の酒と現在の銘柄・製法を直接結びつけることには注意が必要です。本ページでは、古代の発酵飲料、中国の黄酒文化、紹興酒、白酒をそれぞれ区別して紹介しています。
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